離婚する際に選びうる方法(協議離婚/公正証書/調停)
1 はじめに
今回の動画では、離婚する際に選びうる方法(大きく3種類)について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較しながら解説していきたいと思います。
各手段のメリット・デメリットを知ったうえで、ご自身にとって最善のケースを選択していただくための参考になればと思います。
◆ 離婚する際に話し合うべきこと →2.
◆ 離婚する際に選びうる方法(大きく3種) →3.
⑴ 協議離婚
┗⑵ 離婚公正証書
⑶ 調停離婚
◆ 離婚する際の方法3種の比較 →4.
◆ どちらを選ぶべき? →5.
なお、今回の動画は、「離婚すべきかどうか/できるかどうか」ということを説明するものではなく、あくまで、このような選択肢がありますよ、という説明をするものです。
離婚について検討している方、方法について知っておきたい方、あるいは、離婚の話し合いをしているものの どのような形で整理すべきか検討されているご夫婦、そのような方々に向けた内容になるかと思います。
2 離婚する際に話し合うべきこと(離婚条件)
大きく分けると、
・離婚するかどうか
・親権
・養育費
・財産分与
の4つです。その他に、
・離婚協議中の生活費(=婚姻費用)
・年金分割
・離婚の経緯によっては慰謝料
についても、合わせて話し合われることが多いです。
3 離婚する際に選びうる方法(3種)
⑴ 協議離婚
協議離婚とは、当事者のご夫婦が二人で離婚について協議し、合意し、離婚届を提出することで成立する離婚です。
先ほどご説明した離婚条件(離婚すること、親権、養育費、財産分与等)を整理できた場合、その残し方としては、
口約束
↓
合意書(「離婚協議書」「離婚合意書」)
↓
公正証書(⑵で解説)
といった方法があるのですが、下にいくほど強い力をもちます。
⑵ 離婚公正証書
公正証書は、⑴協議離婚の中で作成される離婚合意書の強化版だと考えていただけたらよいかと思います。ご夫婦で話し合われた事柄について、公証役場という機関で「公正証書」という書面に残しておく手段です。
公正証書は、通常の合意書よりも強い効力を持っていて、未払いがあれば強制執行ができます。
なお、繰り返しになりますが、公正証書の作成はあくまで協議離婚(話し合いによる離婚)の延長線上にあるもので、協議事項を明確に残し、法的に強い縛りをかけるために作成されるものですので、公正証書を作成すれば離婚できるという効果はありません。
⑶ 調停離婚
離婚調停は、裁判所の調停手続という場で、⑴の協議を行うことだと考えていただけたらよいかと思います。調停では、調停委員(男女1名ずつが担当します。)に間に入ってもらいながら、当事者の意見や希望を交互に聞き取ってもらうことになります。
調停が成立すると、公正証書と同様に、未払いがあれば強制執行ができるようになります。
※調停が不成立になったら
調停手続で協議を重ねても合意に至らなかった場合、そのケースは「調停不成立」という形で終了します。
なお、調停が不成立に至った場合は、離婚を希望する側が「離婚訴訟」を起こし、民法上の離婚事由(不貞行為、暴力、その他婚姻を継続し難い重大な事由)の存否などが審理され、最終的には裁判官が判決を下すことになります。
※調停前置主義
なお当事者は、調停を行わずにいきなり離婚訴訟からスタートする、ということはできません。これを「調停前置主義」といいます。
離婚訴訟は、最終的に裁判官が判決を下すことになるため、基本的には、一方の主張を認め、他方の主張を排斥する形で決着がつくのが通常です。
他方、調停手続は、裁判所(調停委員会)が間に入り、対立を和らげながら、話し合いによる柔軟な合意解決を目指すものです。
離婚事件の当事者は、これまで密接に関わってきた2人であり、そして特にお子さんがいる場合は、今後も関わっていくであろう関係性にあります。そのような人間関係・親族関係への配慮から、いきなり判決で白黒つけるよりも、まずは調停を通じ双方が納得のいく解決を模索しましょう、というのが、調停前置主義の趣旨です。
※婚姻費用の分担請求調停
離婚調停は、離婚するかどうか、する場合の離婚条件について協議するものですが、これとは別に、婚姻中の生活費分担について協議を行う「婚姻費用の分担請求調停」という手続があります。
離婚調停と婚姻費用調停とは、協議の対象が異なるため、別件として取り扱われますが、両方とも申し立てられている場合は併合して協議される(=同じ調停の日時に2件分合わせて話し合う)ケースがほとんどです。
4 離婚する際の方法3種の比較
5 どちらを選ぶべき?
以上をふまえると、離婚に際してどのような方法を選択すべきか、という点については、凡そ以下のように振り分けられるかと思います。
<協議離婚(+公正証書)になじむ>
・ご夫婦が円滑に協議できていて、離婚条件についても大きな争いがない場合
・そもそも協議事項が多くない場合(婚姻期間が短いケースなど)
<調停離婚になじむ>
・離婚条件について、双方の主張に開きがある場合
・相手と直接対話することが困難な場合
・双方が遠方に居住している場合、相手の消息が分からない場合
※離婚調停に合わせて、婚姻費用の調停も申し立てておくことを検討しましょう。
なお、以上のような手続面の選択肢の他にも、「自分で協議・手続に臨むか、弁護士に依頼するべきか」、という選択軸もあるかと思います。
弊所では「離婚等の家事調停における本人と弁護士の役割」という記事の中で、弁護士の役割についてご紹介していますので、よろしければご参照ください。
6 おわりに
以上、今回の動画では、離婚する際に選びうる方法(大きく3種類)について、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較しながら解説しました。
協議離婚、公正証書、調停離婚という言葉自体は、ネットでもたくさん見かけるようになりましたが、いざご自身が臨むとなると、結局何をどう選択していくのがよさそうか、混乱してしまうことも少なくないのかなと感じます。
今回のお話が、そのような方のご参考になればと思います。
当事務所では、離婚事件も多く担当させていただいている中で、経験をふまえ、各種手続を具体的に説明したり、ご相談者のケースに合わせてスキームをご提案したりしています。
法律論では離婚・離婚協議と一口でまとめられても、実際にそこに直面した方にとっては、それ以上に抱えきれない気持ちや心情とも向き合う時間が必要になります。ですので、せめて法律上整理できる事は、ぜひ弁護士にお任せください。
お困りごと、ご不明な点等ございましたら、どうぞいつでも弊所までご連絡ください。
著者プロフィール
おくだ総合法律事務所
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
福岡県弁護士会所属